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「あの、僕って……詩さんに何かしましたか?」
上半身裸で下はジャージの洋くんが、私に向かって尋ねた。
「……え?どうして?」
私は卵焼きをくるくるしながら聞いた。
「いや、記憶がないし……上が裸だから」
「何もしてないよ。私が筋肉見たいって言ったら、脱いでくれてそのまま寝ちゃったんだよ」
「そっか、良かった」
そうだよ、別に何にもされてませんよ。
私は卵焼きを器に乗せ、鮭の塩焼きをグリルから出した。そして、白いご飯をよそって味噌汁もよそった。
「いただきます」
「いただきます」
向かい合って、一緒に朝ごはんを食べる。何度、こうやって一緒に食べただろう。私たちは同棲して、1か月が経とうとしていた。ちゃんとした恋人になってからも1か月経ったという事。
カレンダーを見ながら、早いなぁ〜と思う。
「洋くん、今日休みだったよね?なるべく早く帰ってくるね」
「うん。洗濯物入れておくよ」
たぶん、彼は昼寝するだろう。昼からでもお酒を飲むだろうし。小説も書き出したと言っていたけど、進んでいるのだろうか。そして、洋くんはまた工事現場で働き出したのだ。
「お昼ごはん冷蔵庫に入れて置いたから食べてね!じゃあ、行ってきます」
「詩さん、頑張って。いってらっしゃい」
洋くんはそう言うと、ぎゅっと抱きしめてキスをしてくれた。胸の奥がキュンと音を鳴らす。
あー、もう!今から仕事なのに、行きたくなくなっちゃうじゃんか。でも、頑張らないと!
私は幸せの余韻を噛み締めながら、玄関のドアを開いた。
もうすぐ、暑い夏が来る。日差しはだいぶ眩しい。降り注ぐ光は焼けるまではいかないが、だいぶ暑くなってきた。
階段を下りながら振り返ると、洋くんがこっちに手を振ってくれている。髪は寝癖だらけだ。でも、可愛い。こんな何気ない幸せをすごく愛しく感じる。今、とても幸せだ。
不満もあるけど……まぁ、いっか。
大好きな人に手のひらを振り、私は歩き出した。
***
洋くん、何してるかな?はやく会いたいな。そんな事を思いながら、家路を急いでいた。
アパートが見えてきて、階段を足早に上っていくと洋くんが段ボールを持って立っているのを見つける。
彼に初めて会った時の光景が頭に甦ってくる。
隣に誰かが引っ越して来たようで、手伝っているみたいだ。頼まれると断れない人だからな。
どんな人が引っ越して来たのだろう?
「洋くん?」
「詩さん!」
振り向いた彼は、その誰かに段ボールを渡している。
茶色い長い髪。細い腕。ふんわりしたミニスカート。彼女がこちらに気付いて顔を向ける。
か、可愛らしい子。しかも……
洋くんが彼女の一点に視線を向けている。
引っ越してきた隣人は、巨乳だった。
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