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おてんばで、身の軽いルネットですけど、上るのは大変でした。
なかなか手が届かなかったり、足元がぐらぐらしてバランスを崩しそうになったりしました。
ようやく屋根まで上りましたが、下を見るとあんなところに落ちたらって考えちゃってこわいので、遠くを見ます。
様々な形のレンガ色の屋根が重なり合うのを見るのは初めてでした。
傾斜の強い屋根をメルメルがすたすた歩く後から、よちよち四つんばいで天窓のところまで行きます。
ルネットとメルメルがそおっと中をのぞくと……びゅっと黒い影が中から飛び出して行きました。
「わっ。わっ」
ルネットは足をすべらせて、危うく屋根から落ちそうになりました。メルメルがスカートの裾をくわえて引っ張ってくれたので、なんとか踏みとどまりましたけど。
「あー。こわかった。……今の何?」
メルメルは『わかんない』と首を振って、『追いかけるよ』と言わんばかりにひげを通りの先に向けます。
「えー?! せっかく上ったのにもう降りるの?」
ルネットの言葉に頓着しないで、メルメルは上ったときよりも素早くぴょんぴょんと通りまで降りてしまいました。ルネットは……そりゃ上るよりもこわいですから、時間かかりますよね。
やっと地面に着いたと思ったら、休む間もくれないでメルメルは駆け出します。それも通りだけじゃなく、近道なのか建物の間の狭いところもさあっと通り抜けるので、ルネットははぐれないようにするのも大変です。
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