第3話:旅芸人と金時計≪事件篇≫

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 ピエロの口上の間に、さっきの二人も両側に並んで、うやうやしく片ひざをついてお辞儀をします。 「何をうじゃうじゃ言っておるんだ! 他の街のことなんぞ知らん。この街ではわしがいかんと言ったら、いかんのだ!」  サーベルをがちゃがちゃさせながら、怒鳴り散らします。 「ほら! みんなも仕事に戻るんだ。復活祭オステルンも終わったというのに、こんなところであやしげな芸を見物してるんじゃない!」  見物人がぶつぶつ言いながら、散っていきます。お巡りさんに見つからないようにそっと旅芸人におカネを渡すおばあさんもいますが、いくらにもならないでしょう。  しょんぼりしながら道具を片付け始めます。ピエロの子どもでしょうか、小さな男の子も手伝っています。彼らの背中を見ているとさっきは気づかなかった衣装の汚れやほころびがルネットの目に入りました。……
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