9人が本棚に入れています
本棚に追加
その夜のことです。肉屋さんの隣の居酒屋では仕事を終えたお巡りさんの大きな声が響いています。
「そうなんじゃ。わしがその大悪人を見事捕まえたのをご領主様もいたくお喜びでな。それでほれ、この金時計をごほうびに下さったというわけさ。……どうだ? すばらしいだろ? わはは!」
ワイン樽のような体を揺すりながら、ジョッキでぐいぐい赤ワインを空けて、すっかり赤い顔になっています。同じテーブルの鍛冶職人も仕立て屋も、金時計の自慢話はもう何十回となく聞いているのですが、『ほお、それはすごい』とか『お巡りさんがいればわしらも安心というものだ』とか適当に相槌を打っていれば酒代を奢ってくれるので、話を聴いているフリをしていました。
最初のコメントを投稿しよう!