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「いえ、結構です。貴女のお気持ちはよくわかりました。……頂きましょうか。せっかくのお食事ですし」  どこか冷たい印象を受ける丁寧な言葉。 「あぁ、そうだね。頂こう」 「……頂きます」  父に続き料理に手をつけた。  おいしい。……これ、なんだろう? こっちは鯛のお刺身かな? 「今後の流れは当初の予定通りでよろしいのですか?」 「あぁ。発表は来週になると聞いている。それまでに準備を頼む」 「承知しました。娘さんには今と変わらない生活を?」 「そうだな。その方が管理しやすいだろう? まぁ、仕事は辞めても構わないが、一日中家にいるというのも気が塞ぐのではないかと思ってね」  父と向かいの男性の会話を気にも留めずおいしい料理を堪能する。何を聞いても私には何も関係ない。進む方向はいつも決まっているのだから。 「結衣子、食事が済んだら彼から今後についての話を聞きなさい。彼の言う通りにすれば間違いはないから」 「はい、わかりました」  父の言葉に素直に返事をした。  昔からそうだ。これは決まっていること。私には拒否する権限も意見をする権限も与えられていない。ただ父の言う通り生きてきた。これから先はそれが向かいの男性に変わるだけ。ただそれだけのこと……。
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