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「難しい話をしてもご理解頂けないでしょうから省きますが、その特許が取得できたことを来週、大々的に発表する予定です。そうなると貴女の身に危険が及ぶ」  ことさら真面目に私を見てそう説明した。……が、私の頭では全く理解が追いつかない。  私の身に危険が及ぶってどういうこと? 「僕のように『結婚しよう』と貴女をたぶらかして仁志家に入り込み、仁志自動車の特許技術を自分のモノにしようとする悪い男が現れる。あるいは噂を嗅ぎつけてもう現れているかもしれませんね」  その『悪い男』とこの人、何が違うのだろうか。話を聞いてる限り、私の目の前にいる男性と『悪い男』は同じだと思う。 「念のためお伝えしておきますが、僕は仁志自動車の特許技術を自分のモノにしようとは考えていません。貴女のお父様には昔ずいぶんお世話になったので、力になりたいだけです。……まぁ、今日その感情も多少削がれましたけどね」  薄く笑ってお茶を飲む向かいの男性。別に心配はしていないし、私はなんとも思わない。 「先ほどからダンマリを決め込んでいるようですが、質問や意見はないのですか?」  刺すような厳しい目で咎められる。 「申し訳ありません。そのようなつもりはなかったのですが。……質問も意見も特にありません」
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