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「断る? 貴女が?」  ニヤリと口角を上げ興味深そうに聞き返してきた。 「はい、貴方がお望みでしたら」 「あぁ……そういう事ですか。いえ、僕はそんなこと望んでいませんよ。むしろ、貴女に断られて色々と面倒なことになると困るので」 「左様ですか。でしたら私はなんとも思いません。挙式もハネムーンも貴方と——」 「庵。峰崎庵です」  私の言葉を遮り『みねさきいおり』と名乗った向かいの男性。 「……失礼致しました。峰崎さんと——」 「庵」  鋭く刺すような視線で私に名前で呼ぶことを要求した。 「……庵……さんと夫婦としてご一緒させて頂きます」 「そうですか。本当に言われたことを守る『いい子』ですね。念のためお聞きしますが、今、貴女が親交を深めている特定の男性はいますか?」 「おりません」 「深い身の上話をするようなお友達は?」  1人だけ思い当たる子がいる。高校時代からよく連絡を取り合っている『萌ちゃん』だ。これは正直に答えるべきなのだろうか。 「……。お答えしなければなりませんか?」 「答えたくなければ答えなくて構いません。ただ、貴女と僕の結婚に関して外部に漏らさないという確信が持てない限り、誰にもこの話はしないで頂きたい」
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