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「わかりました」
「もし、外部に何らかの情報が漏れた場合、話した方を疑わなければならない。よく覚えておいてください。僕からは以上ですが……貴女からは何かありますか?」
「いえ、特にありません」
「……では、出ましょうか」
席を立つ男性に続いて私も立ち上がった。
「先ほどの話は覚えていますよね? この部屋を出た瞬間から恋人同士だと」
厳しく冷たい言葉で念押しされる。
「はい、わかっています」
恋人同士がどんなものなのかわからないのが問題だけど……聞くに聞けないし。
そのまま、部屋を出る男性の少し後ろをついて歩いた。お店を出るとすぐに一台の車がやって来てハザードを出して停まる。何の迷いもなく後部座席のドアを開けた男性。
「どうぞ」
ニッコリと表面的な笑みを貼り付け私に促した。
「失礼します」と声を掛け車に乗り込む私に続き、男性も乗り込んだ。
どこに行くんだろう。この人の家かな。結婚するんだし、もう自分の家には帰れないんだろうな。
少しだけ気分が落ち込む。
「ご自宅の住所は?」
「……え?」
「貴女のご自宅の住所ですよ。家までお送りします」
「あ、住所は——」
思わぬ展開に戸惑いながらも住所を伝えた。
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