エズの国・道場(昼)(クークリウス・ロデルリヒ)

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エズの国・道場(昼)(クークリウス・ロデルリヒ)

〇エズの国、道場 昼   稽古の休憩中 【クークリウス】オワリノ公園? 無法地帯の空き地だろ。それがどうした。 【ロデルリヒ】 あの周辺は何もないでしょ? だから、夜になると月が綺麗に見えるんだ。今晩行ってみない? 【クークリウス】しかし、門限がある。 【ロデルリヒ】 少しは親にも反発してみないとさ。真四角の人間になっちゃうよ? 僕も一緒に怒られてあげるからさ。たまにはいいじゃない。 【クークリウス】叱られるのが嫌なわけではなく、規則を破ることが…… 【ロデルリヒ】 クック。戦場に動線が引いてある? 死に物狂いの人間が、流派を意識した動きで刀を振るう? 【クークリウス】……回りくどい言い方をしないでくれ。 【ロデルリヒ】 世の中は規則通りに動かない。一緒に月見に出かけない? たまにはいいものだよ。静かな野原で見る月もさ。 【クークリウス】……何時にどこに行けばいい。 【ロデルリヒ】 そうこなくちゃ! オワリノ公園までは少し遠いから、早くに家を出よう。稽古が終わったらすぐに支度して。僕がクックの家まで迎えに行くよ。 【クークリウス】……ロディ。 【ロデルリヒ】 ん? どうかした? まさか、持ち物まで教えてもらわなきゃなんて思ってないだろうね? 【クークリウス】違う。……叱られることになったら、真っ先にお前に誑かされたと言うからな。 【ロデルリヒ】 あはははは! いいよ! 言ったろ、一緒に怒られてあげるって! 【師範】   ロデルリヒ、静かになさい。 【ロデルリヒ】 はぁい、ごめんなさい。(クークリウスに)……楽しみだね、今晩。 【クークリウス】……ああ。初めてだ、こんな……規則に背く行為なんて。 【ロデルリヒ】 クックはお堅すぎるんだよ。あんまり規則規則言ってると、肩も首も凝り固まっちゃって動かなくなるんだ。適当に、動きやすいように生活するのがいいんだよ。僕みたいにね。 【クークリウス】お前はもう少し、堅実に生きた方がいいと思うが。 【ロデルリヒ】 僕とクックを足して二で割ったら、きっと丁度いい人間ができあがるよ。 【クークリウス】不可能だろう、そんなこと。 【ロデルリヒ】 例えの話じゃない。僕だってできるとは思ってないもの。人間ってのはね、不完全だからこそ面白いんだ。クークリウス、君だってそう思うだろ? 【クークリウス】私は、完全になりたい。 【ロデルリヒ】 じゃあなんで僕と友達でいるんだ? 【クークリウス】なんでって……。 【ロデルリヒ】 僕にあってクックにないものがあるからだよ。僕ら、二人でいて丁度いいんだ。 【クークリウス】……じゃあ、私は一生、完全な人間にはなれないということか? 【ロデルリヒ】 誰も、完全にはなれっこないよ。それが一番、世界としてはいいバランスなんだ。 【クークリウス】……ロディの話は、いつも難しい。 【ロデルリヒ】 じゃあやめよう! これ以上難しい話をしてクックを疲れさせちゃったら、今日家に帰ってすぐに寝ちゃいかねないもんね。 【クークリウス】そんなに幼くない! 【ロデルリヒ】 はいはい、もうお勉強の時間は終わりにするからね~。 【師範】    ロデルリヒ! 静かになさいと言ったでしょう! 【ロデルリヒ】 僕ばっかり𠮟りつけるんだから……。
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