弐 あけぼの

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「お願いちます!」 「ありがとう。今、お水をお持ちしますので、  好きなお席に座っていてね」 優しく微笑んだ彼女は康太君から 食券を五つ受け取ると、男性に声をかけた。 「オーダー入ります」 「了解」 男性は食券を見ると、てきぱきと料理を作り始めた。 彼女も一緒に手伝っている。二人のチームワークは無言の中で行なわれていた。息の合ったコンビネーションに、何となく似ている顔。二人はもしかして… 「あの二人、美男美女だね。夫婦かな?」 僕の心を代弁するように、向かいに座った前川さんが言ったから、驚いて真正面を向いた。 「ねえ、なんとなく、わかっちゃったんだけどさ」 「何がですか?」 僕はさっきから落ち着かない気持ちを鎮める為に 何度もお冷を口にした。 「脇田君が一目惚れした彼女って、あの子?」 前川さんは噎せてしまった僕に微笑んだ。 「わっかりやす!それでは、応援してしんぜよう」 「いや、何言ってるんですか、  余計な事しないでくだ」 「あ、認めた」 「いや、その、これは違っ」 「脇田!」 「はい」 「もしその気がないなら、私がアプローチするよ」 「は?」 「勇気出しなさい。  黙ってみてるうちに誰かに盗られちゃうよ?  私みたいに」 眼力と説得力がすごくて固まっていると入口のチャイムが鳴り、スーツ姿の男性客が二人でやって来た。彼女は満面の笑顔で出迎えて親しげに何か話している。常連なのだろうか。 手にしたグラスの水がやけに冷たく感じられた。
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