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壱 夜に閉じた心
人気の無い公園の暗闇の中であと少しで
彼女の唇に触れそうになった時、
泣きそうな声で鞠子ちゃんが言った。
「ごめん、全部、嘘なの」
「えっ」
「ジャンケンで負けて、脇田君に告白するってことになって。だからこういうこと、出来ないよ」
「それって…」
「ごめんっ。だから、もう、終わりにしよ」
鞠子ちゃんは走り去り、
僕は一人残された。
目の前にはさっきまで二人でしていた花火の残骸が
黒ずんだ影を作っている。
僕の恋が初めて散った
中二の暑い夏の夜のことだ。
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