第十一章 坂の上で消えた道

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 坂道は一本道で、車を止めると目立ってしまう。そこで、崖の下にボートを付け、夜を待ち忍び込んでいた。 「拓海は餓死寸前で、意識が朦朧としていて自分で歩ける状態ではなかった。そして、夜の細道は危険だった…………」  ミャーミャーは兄を助けたい一心で、懸命に夜道を走った。山田に見つけられる事を恐れ、暗闇で明かりを付ける事も出来なかった。細い下りの道で、ミャーミャーは転び、立ち上がって、もう一度走り出した。しかし、その先の暗闇は、崖になっていて、もう道は無かった。  冬の海にミャーミャーは転落し、心臓麻痺で即死した。同時に、拓海と猫も死に、そのまま沈んだ。 「そのまま、沈んだ?すると、山田はミャーミャーと拓海さんが死んだ事を知らないのですか?」 「そうなるね」  しかし、その倉庫では幾人もの人間が餓死してしまい、海に捨てられた。 「時国さんに場所を知らせておきます」  きっと現場には、失踪者の持ち物があるだろう。殺人を立証できなくても、関わっていた事を証明できるかもしれない。 「倉庫には地下がある。天井に入口があるもので、井戸のような雰囲気だ。下に水が溜まると、冬場では凍死してしまう。餓死だけではなく、凍死のセンもある」  そして、山田の端末には、餓死に至るまでの記録や画像がきっとある。それは、コレクションで宝物であった筈だ。記憶媒体に隠していたとしても、きっと、どこかに存在している。
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