第一章 ミャーミャーは猫じゃない

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 今日は、黒船の上にある喫茶店、金太楼の常連客も来ていた。俺が歩み寄ってオーダーを聞こうとすると、客は俺の手を掴んで握り締めていた。 「はあ!!!疲れた。八起ちゃん成分が不足してしまって…………充電させて……まだ、これから仕事だからね…………」 「お仕事、頑張ってください!!」  客が俺の手を握ったままで、離そうとしないので、駿河がカウンターから出てきて頭を下げた。 「あの……」 「あ、オーダーだよね。お勧めを二つ」  メニューに、お勧めなどというものはないが、金太楼の客はいつもこうなのだ。好みは覚えているので、厨房の寿村に頼んでおこう。 「かしこまりました。繰り返します、お勧め二つですね?」  黒船は、普段は女性客で一杯になっている。だが、今日は忍坂兄弟が揃って休みなので、男性客が多くなっていた。 「あと、八起ちゃんね」 「はい!頑張ります」  駿河はやや呆れているが、そんな客にも慣れていた。だが、やはり対応に疲れているようだ。 「八起ちゃん、こっちにも追加オーダーを取りにきて!」 「はい!今行きますので、少々お待ちください」
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