第一章 ミャーミャーは猫じゃない

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 今度の客は、コーヒーの持ち帰りをオーダーしつつも、俺の腰に手を延ばし、引き寄せて抱き締めていた。 「八起ちゃんに昼間も会えるのは嬉しい!」 「はい、オーダーを繰り返します。コーヒーお持ち帰りですね?」  オーダーを確認しても、客が俺に抱き付いたままなので、再び駿河が頭を下げにきた。 「お客様、あの…………すみません」 「あ、ゴメンね。もう少ししたら、解放するからね」  一回のオーダーで、十分くらいかかってしまう。その分、駿河が動いていて、俺を睨んでいた。 「八起、忍坂兄弟はどうしたの?」  駿河は俺のお守り役がいないと嘆き、忍坂兄弟に来て欲しいと呟いていた。 「ああ、今日は用事があって、二人で実家に帰っている」  忍坂兄弟の弟、直哉からは執拗に一緒に帰ろうと誘われたが、きっぱりと断った。俺の帰る家はここで、他には存在しない。 「八起がいると、客が男ばかりだ…………」  俺は地球人の純血種で、異性から嫌われ、同性に好かれてしまう性質があった。そのせいなのか、客層が見事に男ばかりになっていた。 「本当だな」  こんなにお洒落な店なのに、今日は八割が男性客になっていた。お洒落なメニューも、今日は定食屋のように、大盛りだ、山盛りだというオプションが入っている。
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