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今度の客は、コーヒーの持ち帰りをオーダーしつつも、俺の腰に手を延ばし、引き寄せて抱き締めていた。
「八起ちゃんに昼間も会えるのは嬉しい!」
「はい、オーダーを繰り返します。コーヒーお持ち帰りですね?」
オーダーを確認しても、客が俺に抱き付いたままなので、再び駿河が頭を下げにきた。
「お客様、あの…………すみません」
「あ、ゴメンね。もう少ししたら、解放するからね」
一回のオーダーで、十分くらいかかってしまう。その分、駿河が動いていて、俺を睨んでいた。
「八起、忍坂兄弟はどうしたの?」
駿河は俺のお守り役がいないと嘆き、忍坂兄弟に来て欲しいと呟いていた。
「ああ、今日は用事があって、二人で実家に帰っている」
忍坂兄弟の弟、直哉からは執拗に一緒に帰ろうと誘われたが、きっぱりと断った。俺の帰る家はここで、他には存在しない。
「八起がいると、客が男ばかりだ…………」
俺は地球人の純血種で、異性から嫌われ、同性に好かれてしまう性質があった。そのせいなのか、客層が見事に男ばかりになっていた。
「本当だな」
こんなにお洒落な店なのに、今日は八割が男性客になっていた。お洒落なメニューも、今日は定食屋のように、大盛りだ、山盛りだというオプションが入っている。
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