第一章 ミャーミャーは猫じゃない

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 駿河と駅前を抜け、裏の路地に入る。噂の人物は、学生が行く、大盛り定食屋の店員をしていた。 「安くて、美味しそうだ…………」 「しかも、大盛りだ」  学生にとって、貴重な大盛りの格安で、しかも手作りだった。当然、店は学生で溢れていて、幾人かが外に並んでいた。 「餃子どんぶり?」 「器に餃子を山盛りにするのか?……」  だが、そそるメニューだ。 「並ぶか?」 「そうだな」  店の前に食券の販売機があり、小銭を入れるとメニューを選んだ。しかし、雑なメニューもあって、多分日替わり定食などというものもあった。 「席が空いたみたいだ。入るか」 「空いたのはいいけれど、随分、奥だな」  店はカウンター席と、テーブル席が三つというような小さなものだった。しかし、壁などに妙な棚があると思ったら、そこにトレーをセットして、簡易的なテーブルにして食事をしている者が多くいた。他に路上でも、ビールのケースを机にして食べている者がいた。 「あの、日替わりはありますか?」 「まだ、あるよ」  どうも、日替わりの食券を買っても、食べられるわけではないようだ。店内の貼り紙を見ると、日替わりが切れたら、残っている食材を山盛りで出すと書かれていた。
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