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部屋の真ん中に男の死体が転がっている。
死因は背中からナイフで一突き。ナイフは心臓にまで達していたらしく、ほとんど抵抗の痕跡もない。
そして、Xの前には五人の男が立っている。それぞれがXを睨むようにして、何か言いたげにしている。実際のところ、言いたいことはいくらでもあるのではないだろうか、と私は思う。それでも黙っているのは、それがこの『異界』のルールだから、なのだろうか。
Xの横に立つ、帽子を目深に被った少年が言う。
「さあ、名探偵」
この『名探偵』というのが、どうやらXのことらしい。Xは黙りこくったまま、その場に立ち尽くしている。
「事件当時、現場にいたのがこの五人です。一人ずつ、証言を聞いていきましょう。もし犯人でないのなら、正しい証言をするでしょうが……、この状況です、犯人は『必ず』嘘をつくでしょう」
少年は『必ず』という言葉を強調した。Xは相変わらず何も反応を示さない。そんなXに少年は帽子のつばを上げて怪訝そうな視線を向けたようだったが、怪訝に思っているのはXも同じなのではないだろうか。
何せ、この部屋に降り立った瞬間にはこの状況だったのだから。
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