名探偵

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 ……そして、今回の『異界』が、これだ。  舞台は洋館の一室。窓は雨戸まで閉じられており、天井の明かりが煌々と部屋の中を照らし出している。  用意された死体は一つ。容疑者は五人。  五人は、少年の指示に従って一人ずつ発言していく。その一言一言は酷く短く、簡潔なもので。その一言ずつを少年は手元の手帳に書きとっていく。  一人目のアルファ曰く、「俺はずっとチャーリーと一緒にいたんだ、俺もチャーリーも犯人なわけがない」。  二人目のブラボー曰く、「犯人は、アルファ、チャーリー、デルタの中にいるはずです」。  三人目のチャーリー曰く、「エコーは犯人ではない……」。  四人目のデルタ曰く、「アルファ、チャーリー、エコーはずっと僕から見えるところにいたから、犯人ではないよ」。  五人目のエコー曰く、「私は知っている。アルファかブラボーのどちらかが犯人だ」。  一人が口を開いている間は、他の面々は堅く口を閉じている。まるで、そうすることが当然であるかのように。  五人の話を聞き終わった時点で、少年は再びXに向き直る。 「名探偵。……誰が犯人なのか、わかりますか?」
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