12:シエラの回想(シエラ)~後半~

1/1
前へ
/100ページ
次へ

12:シエラの回想(シエラ)~後半~

 向こうは恐らく断れない。何せ、国王命令だから。 その人に対して、利用しようとしている事に申し訳ない気持ちと、何とか元に戻りたいという気持ちで葛藤はあったけど、やはり元に戻りたい私は、その話を受け入れた。  私はバラ園にいた時、王女と言う身分を笠に着ている自分にむしゃくしゃしていたの。  そこへ聞いていたあなたが通りかかって、凝視するもんだから、つい「お前もか!」 と思って感じの悪い態度とっちゃったんだけど。  あの後、自室に帰って、またそういう趣味の人が婚約者になるようだと愚痴ってました。ユーナに宥められていたけれどね。  新しく婚約者になったアルバード・セル・アーベンラインは、かなり変わった人だった。  初対面はアレと同類かと思って、またかと思い心底嫌だったんだけど、私の勘違いで、そうじゃなかったので、ホント安心した。  それに全然貴族らしくなかった。何でも冒険者を10年近くしていたから貴族とはかけ離れた生活を送っていたらしい。 すっかりその習慣が身についてしまったんだとか。  年は私より9歳上だった。彼は気遣ってくれたけど、そこは全然気にならなかった。  話していてわかったけど、根はかなり優しい人だと思う。    新しく婚約者になったのがアルバードで良かった、って少なくとも今は思える。       「さっきは睨んじゃって、悪いことしちゃったわ。」  「アルバード様ですか?」  「うん。てっきりライル様と同類かと思っちゃったから。」  「ただたんに、小さい可愛い女の子がいるなって思っただけだと思いますよ。かなりざっくばらんな方のようですしね。それに・・・」    「それに?」  「あの身体!すごくありません?騎士の精鋭部隊並みの身体ですよ!私はああいう鍛えられた身体が好みですので、姫様が羨ましいですわ~」  そういうと、ユーナはうっとりと頬に手を当てていた。  「え?ユーナはああいうのがタイプだったの?」  「そうですよ。心身ともに頼れる感じでいいじゃないですか。私は線の細い男性はあまりタイプではありませんからね。」  「へぇ~初めて知ったわ。」  「言ってませんでしたからね。」  「・・・確かに聞いてもなかったわね。」  アルバード・・・確かに冒険者をしてただけにすごい身体してたな。黒髪に深い藍の瞳。顏もまぁ、悪くはない・・・どころか、よく見たらイケメンだった。  ・・・そうよね、私あの人と結婚するんだもんね。あの腕で抱きしめられたらどんな感じなんだろう・・・  ってぇええ!  「ダメえええええ!」  シエラはこれ以上想像してはいけないと、自制した。  「なんですか、姫様急に大きな声で。」  「え・・・と、いや、ナンデモナイデス。」  変な想像したなんて、恥ずかしくて言えないー。  シエラは気付いていないが、動揺したせいで棒読みになっていた。  「姫様、顔が真っ赤ですよ。おおかた、ちょっといかがわしい事でも想像でもされたんでしょ?」    「!!なんでわかったの?!」  「何年一緒にいると思ってるんですか、それくらいわかりますよ。」  いかがわしいとか、言ったものの、初心なシエラの事だから、抱きしめられるとか、いいとこキスぐらいだろうと、長年の付き合いからユーナは想像がついていた。  「いやーーー私の心覗かないでぇえええ」  「別に覗いてはいませんから。」  そんなこんなで、シエラとユーナはまたいつものやり取りをしていた。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加