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12:シエラの回想(シエラ)~後半~
向こうは恐らく断れない。何せ、国王命令だから。
その人に対して、利用しようとしている事に申し訳ない気持ちと、何とか元に戻りたいという気持ちで葛藤はあったけど、やはり元に戻りたい私は、その話を受け入れた。
私はバラ園にいた時、王女と言う身分を笠に着ている自分にむしゃくしゃしていたの。
そこへ聞いていたあなたが通りかかって、凝視するもんだから、つい「お前もか!」
と思って感じの悪い態度とっちゃったんだけど。
あの後、自室に帰って、またそういう趣味の人が婚約者になるようだと愚痴ってました。ユーナに宥められていたけれどね。
新しく婚約者になったアルバード・セル・アーベンラインは、かなり変わった人だった。
初対面はアレと同類かと思って、またかと思い心底嫌だったんだけど、私の勘違いで、そうじゃなかったので、ホント安心した。
それに全然貴族らしくなかった。何でも冒険者を10年近くしていたから貴族とはかけ離れた生活を送っていたらしい。
すっかりその習慣が身についてしまったんだとか。
年は私より9歳上だった。彼は気遣ってくれたけど、そこは全然気にならなかった。
話していてわかったけど、根はかなり優しい人だと思う。
新しく婚約者になったのがアルバードで良かった、って少なくとも今は思える。
「さっきは睨んじゃって、悪いことしちゃったわ。」
「アルバード様ですか?」
「うん。てっきりライル様と同類かと思っちゃったから。」
「ただたんに、小さい可愛い女の子がいるなって思っただけだと思いますよ。かなりざっくばらんな方のようですしね。それに・・・」
「それに?」
「あの身体!すごくありません?騎士の精鋭部隊並みの身体ですよ!私はああいう鍛えられた身体が好みですので、姫様が羨ましいですわ~」
そういうと、ユーナはうっとりと頬に手を当てていた。
「え?ユーナはああいうのがタイプだったの?」
「そうですよ。心身ともに頼れる感じでいいじゃないですか。私は線の細い男性はあまりタイプではありませんからね。」
「へぇ~初めて知ったわ。」
「言ってませんでしたからね。」
「・・・確かに聞いてもなかったわね。」
アルバード・・・確かに冒険者をしてただけにすごい身体してたな。黒髪に深い藍の瞳。顏もまぁ、悪くはない・・・どころか、よく見たらイケメンだった。
・・・そうよね、私あの人と結婚するんだもんね。あの腕で抱きしめられたらどんな感じなんだろう・・・
ってぇええ!
「ダメえええええ!」
シエラはこれ以上想像してはいけないと、自制した。
「なんですか、姫様急に大きな声で。」
「え・・・と、いや、ナンデモナイデス。」
変な想像したなんて、恥ずかしくて言えないー。
シエラは気付いていないが、動揺したせいで棒読みになっていた。
「姫様、顔が真っ赤ですよ。おおかた、ちょっといかがわしい事でも想像でもされたんでしょ?」
「!!なんでわかったの?!」
「何年一緒にいると思ってるんですか、それくらいわかりますよ。」
いかがわしいとか、言ったものの、初心なシエラの事だから、抱きしめられるとか、いいとこキスぐらいだろうと、長年の付き合いからユーナは想像がついていた。
「いやーーー私の心覗かないでぇえええ」
「別に覗いてはいませんから。」
そんなこんなで、シエラとユーナはまたいつものやり取りをしていた。
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