3:王女の事情(シエラ)

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3:王女の事情(シエラ)

 なによ!あの人!!  あんなでっかい体して、小さい女の子にデレデレして!あの人絶対変態よ!ロリコンなんだわ!  やだやだやだ、なんであんな変態のところにお嫁に行かなきゃいけないのよ!  こんな体じゃなかったら、普通にお嫁に行けたのに・・・ ・・・本当にどうしてこんなことになったのか・・・  シエラ・リル・アルカディア  この国、アルカディア王国の第一王女である。  彼女は本来は18歳の乙女であるが、身体は現在5.6歳の幼児になっている。  なぜこんなことになっているかというと、彼女は呪われてしまったからだ。  遡ること、3年前まで話は戻る・・・  彼女は元々、隣国の第二王子と婚約をしていた。単純に、政略結婚のためだ。  ただ、隣国とは言うものの、実際シエラの国、アルカディア王国は、島国のため周りは海で囲まれている。陸地の一番近い国と言うのがバランドール王国になるのだ。   その為に、彼女シエラ王女は15歳の時に隣国の主に貴族が通う王立魔法学院に留学をすることになったのだ。政略結婚とはいえ、親睦を深める為でもあった。  バランドール王国は魔法の先進国で、攻撃魔法から治癒魔法、そして生活魔法とバランドールでは生活する上で魔法は欠かせない、あって当たり前のものになっている国だった。  シエラ王女は好奇心も手伝って、学院では魔法に取り組んでいたのだが・・・ところが段々と雲行きが怪しくなってきた。いくら頑張っても、彼女は魔法を発動することは叶わなかったからである。あまりにもおかしいという事で、魔力検査を行ったところ、シエラには魔力が少しもない事が発覚したのだ。  バランドールでは、貴族なら魔力を持って当たり前の国であった。学院はその魔法を研鑽するところでもあったから、誰しも隣国とはいえ、王族なら魔力は持っていて当たり前だと思っていたところへ、まさかのシエラが魔力無しということが判明してしまったのだ。  そうなると周りの評価が変わってしまい段々と馴染めなくなってきていた。バランドールは魔法が長けているだけあって、魔力が豊富な者ほど重宝され、魔力が低いものは、ないがしろにされる。そんな魔力カーストがある国だったからだ。  シエラもさすがに空気が読めない訳ではないし、バランドールの魔力カーストのことも知ってはいた。初めは王女と仲良くしようとしていた者も、シエラに魔力がないことを知るといつしか離れていってしまった。  自分が隣国の王女という立場から、さすがに表立って罵倒されるようなことはなかったものの、自分を見る蔑まれた眼差しがわからないほど、シエラは鈍感ではなかった。  現に、留学してから1年が経つがいまだに友人と呼べるものはできなかったのである。  だが、そんな中彼女の希望は婚約者の第二王子のライルだった。打算的ではあるが、国同士の結びつきの為にもシエラは自分をないがしろにすることはないだろうと、希望を見出していたのだ。  ライルとは、定期的にお茶会では会うが、学院では学年が違うこともあるせいか、学院でもそうそう会うこともなかった。  そのお茶会では、  「シエラ王女、ご不便はありませんか?」  とは聞いてはくれるのだが、自分がいまだバランドール王国に馴染めないなどということは、彼女のプライドから言えるわけもなく、  「えぇ、皆さん良くしてくださっていますので、何の問題もありませんわ。」  と、見栄をはっていたのだ。  彼女も自分で自分の首を絞めているのはわかっていたが、いかんせん性格的にも長女気質から甘えるという行為がなかなかできなかったのも災いしてしまったのだ。  「そうですか、もし何かあるようなら遠慮なく仰ってくださいね。」  「はい、ライル様、お気遣いありがとうございます。」  あぁーー!私のばかぁああ。  彼女は心の中では頭を抱え自分で突っ込みを入れていた。  婚約者は別に悪い人ではなかった。恐らく気は使ってくれてはいたが、ただ自分が思うほどのそれではなかった。要は事務的だったのである。  どうしよう、夫となる方なのに、なんだかあまり距離を縮められていないように思える。  シエラもも何となく婚約者とは距離感があることはわかっていた。  でも結婚したら変わる・・・よね?  と、淡い期待を胸に抱いていたのだが・・・  その思いは早々に打ち砕かれ、彼女は聞いてはいけないことを聞いてしまったのだ。
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