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11-1 ピアノ
ジャンパーになったのは、
10歳の時だった。
帝星の衛星に住む私と家族。
父と母と妹。
ごく普通の家庭に育った私。
父と母は仕事が忙しくて、
私が妹の父と母代わり。
楽しいことは知らない。
世の中に楽しいことがあるってことも知らない。
そんな毎日はずっと続くんだろうなってなんとなく感じてた。
妹がグズり始める。
お腹が減ったのかな?
何か食べさせなきゃ…
たまには、
私も自分で作ったものじゃない、美味しいものを食べたいなって思った時に、
ずっと食べたかったハンバーガー店にジャンプしてた。
(このハンバーガーって食物は地球生まれだったことをかなり後に知った。)
それから私のジャンパー生活が始まった。
ジャンパーは希少な存在。
場所を強く思うだけで、瞬間で移動できる。
古代は人間兵器や暗殺やら、
汚い仕事につかわれていた。
現在は帝国の情勢はずっと平和だから、
主に情報収集(スパイ的な)につかわれている。
そんなこんなで、
ジャンパーは帝国情報局の職員になってる。
ジャンパーにはA級からD級の4段階の等級に分けられる。
10歳の私はD級の職員となった。
父と母は喜んで私を差し出した。
帝国の直轄情報部へ娘が行くなんてことは、
一般市民からほぼあり得ないこと。
私の家族は働かなくてもいいくらいの金額が帝国から毎年振り込まれる。
寂しさと引き換えに、
親孝行になったから、
それはそれでいい。
もう、私は親や妹に会うことはないだろう。
私は、
ジャンパー学校へ入学して、
あれこれ習った。
この学校はとてもつまらなかったから、
特に言うことはない。
素質があったのか、
私の努力なのか、
いつの間にかA級ジャンパーになっていた私。
学校で地球という星を知った。
青い美しい星。
帝国にはない、文化も持ってる。
アニメーションとかって言う、とても楽しいものがあるって上流階級出のジャンパーが言ってた。
でも、彼女はB級ジャンパー。
A級は帝国には20人もいない。
普通以下の家庭で育った私は、A級であることが唯一のプライド。
ジャンパー学校の修学旅行は、
各自、
好きな場所にジャンプして、一週間の修学旅行を楽しんでいいことになってる。
私は…
3万光年先の地球に決めた。
先生には無理だと言われたけど、
アニメーションをみたい。
どうしても。
楽しいって気持ちを知りたい。
先生は私の熱意に負けて許可をくれた。
地球語の多機能トランスレータ(翻訳機)が支給された。
これは銀河系の地図と、翻訳機を兼ねているようなもの。
あとは服装…
別に私服そのままでも大丈夫そうだ。
服については、地球と帝国はそんなに違いはないみたい。
自由な一週間。
行きたかった地球。
夢見心地のまま、私はジャンプした。
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