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よく知ってる天井が見える。 すごくよく寝たな。 そう言えば、昨夜はなにかあったような気がするんだけど…。 「やっと起きた。」 顔を横にしたら… シズがフレームイン。 近い。 隣に寝てる。 「これ、布団って言うんでしょ? 狭くてなかなか素敵な寝具ね。 トモヤ…寝言、言ってたわ。 イビキも…。」 「なんて言ってた?」 「……内緒。 人の隣に眠るのって、安心感があるのね。 トモヤだからかな?」 あれ? 昨夜… たしか… ピアノが酔っ払ってて、 シズが店に来て… ユイ! ユイがおれを… 布団をめくる… シズは下着姿だった。 薄いブルーが良く似合ってる。 「あっ、 ごめん。 そんな… まさか、下着で寝てると思わなかったから。」 「なにか感じた?」 感じたけど、言わない。 シズが手を… そこに伸ばしてくる。 「よかった。 私でもちゃんと感じてくれてる。」 「シズ、それ以上したらダメだよ。 止まらなくなる。」 「私はいいのに。」 おれはシズの手を… そこから離して、にぎった。 「昨夜… おれ…確か…ユイに。」 「もう大丈夫よ。 傷一つないから。 旗艦にいる医療スタッフは優秀なの。 肝臓を刺されて、かなり危険だったのよ。」 あっさり言うシズは、何かを急いでいるような…。 これ、おれの我慢大会になりそうだ。 「おれ、もう死ぬんだと思ったよ。 でも、それでも仕方ないかなって。 人はいつか死んでしまうものだから。 早いか遅いか。 それも寿命かなって思った。」 シズはとても、おっかない顔をした。 「トモヤは死んではダメ。 みんなの希望なの。 私の未来でもあるの。」 「シズのおかげて生きているんだな。 ありがとう。」 「悔しいけど、メゾピアノががんばってくれたおかげなの。 お礼言っておいてください。 もう一度くらいなら、 キスしてあげても、 知らなかったフリするわ。」 「ピアノも… そっか… 早めに何か書くことにしようかな。」 シズはおれの胸に頭をのせて。 「トモヤがいなくなることを考えたら、とても怖くなった。」 「ユイはどうしてるの?」 継続中の、 シズの思いつめた、怪しげな雰囲気を漂わせてる。 注意をそらす。 「宇宙に放り出してやろうかと思ったわ。 でも、 そんなことしたら、トモヤに嫌われるから… トモヤの記憶だけ、 ニューラライザーで消したの。」 「ニューラライザーって、MIBで出てくる、ピカッと光ったら記憶を消せるあの機械? ほんとにあったんだ。」 「本当は日本の法律で裁かれるべきなのはわかってるけど、 トモヤが刺されたことが公になると、 日本国の立場がなくなり、 対策室の人々の立場がなくなり、 銀河系のトモヤファンが地球におしかけてのお見舞い… 大変なことになる。 いろんなことを鑑みると、なかったことにするのが一番賢い選択じゃないかと思ったの。 そもそも殺人未遂と言っても、傷はないし… 証拠もすべてきれいに消したわ。 ピアノは最後までユイを処分しろ!って息巻いていたけど… トモヤに嫌われるわよって言ったら、大人しく私の選択を受け入れたの。 メゾピアノは… トモヤのこと… それは、いいとして。 ユイは、ニューラライザーによって、 黒い暗い自分を消せた。 つまりは、女優ユイとして、裏も表もなく、これからの人生を歩いていけるってこと。 トモヤなら、きっとこうするんじゃないか…って思ったの。」 やはり、未来の帝だ。 罪を憎んで人を憎まず。 「シズ、 がんばったね。」 おれは、 自分から、 シズにキスをした。
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