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行く末
昼食時、学友たちと弁当を食べていると、秀秋のスマホがしつこく鳴った。
「女か?」と茶化してくる友を体から剥がし履歴を見ると、富子の名前で数分おきに埋まっていた。
嫌な予感がした。
慌てて人気の無い場所へと移動し、富子に折り返す。
「もしもし?どうしたの、伯母さん?」
「あぁ~!秀くん!秀くん!私達はもう駄目!終わった……終わった!」
富子は開口一番から泣き叫んでおり、普通ではなかった。
「動画……貼っといたから……見ながらもう帰ってきなさい……気をつけてね」
「動画?」
力弱く富子からの電話は切れた。
画面には富子から送られてきていたリンクが貼られてあり、秀秋はそっと指でそれを踏んだ。
「こちら火災があった~~商社~~、当局は最初に出てきた男に声を~~、何と犯行を自供し始め~~」
そこに映っていたのは黒煙にむせながら慌てて飛び出てきた一郎の姿であり、一郎は外で待っていた記者に突撃取材を受けていた。
「この男性は~~、今朝~~であった通り魔事件についても犯行を仄めかしており~~、警察は捜査を~~」
そこまで見て秀秋はもう再生を止めた。
呪いの勝負は審判を含め、最低でも三人は必要であり、一郎がいなくなってしまえばもう秀秋たちに未来は無かった。
秀秋はもう一度、富子に電話をかけた。
「あぁ、伯母さん?見たよ、動画。ありがとう。……うん、大丈夫。もう帰ってるし、今日はもう美味しいご飯食べて寝よっか。……あぁ、あと父さんには言えなかったけど、伯母さんと一緒に過ごせて幸せだったよ、ありがとう。だから、もう泣かない……え?これは嘘じゃないよ~!」
そう言って秀秋も泣き笑いながら帰路を急いだ。
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