あるスタッフによる編集後記(編集サポート担当者)

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 彼自身はいつも悩んでいたのだと思います。これが証拠だとは言い切れませんが、彼がフランスのチーム名の中に残した文字遊び(アナグラム)は、「逃げろ!」と自分自身やチームの若いメンバーに語り掛ける、隠された、でもとても強いメッセージだったのだと思います。  残念ながら、私たちは、彼の存命中に、彼が左手と右手で書き分ける、そのメッセージを読み取ることができませんでした。  でも、現在も悩みを抱える人たちがいれば、私たちは、そういう人々に対して、彼に代わって、メッセージを送ることはできます、「逃げろ(NIGERO)」と。もしも、もう駄目だと感じたら、生き延びるために、勇気を出して、「闘うな」、「留まるな」、「NIGERO」と。  この本は、人生の中での食事というイベントの意味を今まで以上に大切にとらえることや、個人の嗜好の違いをお互いに尊重し合うという共存共生のメッセージを伝える本でもありますが、出版に携わった人間として、こういうコンセプトの重要さを遅ればせながら、ようやく「頭」ではなく「感覚」として理解し、実感できたのは、この本の出版が予定よりも大幅に遅れていく最中に、私個人のプライベートな生活でも大きな変化が起きたことが大きいように思います。  ひとつ目の変化は、私自身がセミ・ベジタリアンになったことです。カテゴリーは、酵母やキノコなどの微生物食と卵料理をフンダンに取り入れたオヴォ・ベジタリアンです。  もうひとつの変化は、私にも新しい「家族」ができたことです。成り行きから「家族」になった男性には、最近まで知らなかった理解不能な秘密がいくつもあって、それでも、「ヴィーガンになる前に読む本」を作る中で学んだ、「お互いを尊重」するというコンセプトを思い出すことで、我慢できるところは無理なく我慢できるようになりました。  せっかく家族になったのだから、「お互いを尊重」したいし、そうすると、それだけで何か豊かな人生がスタートできるような気持ちになれます。  
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