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涼やかな風と、鳥の声……
──ああ、夢ではなかったのですね……
目を覚ました女王様の前には、扉が一つ在りました。
けれどもそれは、愛娘と並んでくぐった、あの扉とは違うものでした。
女王様は立ち上がりました。
──王女はその身を地獄に堕としても後悔せぬほどに、私に報いたかったのですね……
嘆いていても、仕方ない。
ならば母は、あなたのいるところに向かいましょう。
そこであなたから放たれる全ての矢を受けましょう。
そして全てが済んだなら、私はあなたの目の前で、必ず這い上がって見せるでしょう。
そうすれば、あなたはいつかきっと、この憎き母を追い、天に上って来られるでしょうか……。
ここならば、時間はいくらでもあるのだから。
女王様は、再び扉に触れました。
(了)
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