第1章

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     ◆ 『遠慮します。すみません』  まさかの雅巳くんに振られてしまいました。  話は過去に遡るが、俺が昨年インフルにかかって自宅で一人寂しく療養してた時の事だった。仕事帰りのスーツ姿でフルーツの入ったビニール袋を手に『生きてますか』って現れ、熱が落ち着くまで寝ずに看病してくれたはずの雅巳くんに……  振られてしまいました!!  まあ実を言うと、回復後、気が緩んでベッドの上で粗相(そそう)してしまったのが原因で苦労かけてしまったのだ。それ以来あいつ俺から距離を取って接してくる様になったんやけど……多分一生恨んでると思う。『他の奴に吹聴(ふいちょう)したら殺しますよ』と口止めされてるし。  そうか、あれが原因だったか……。  理人さんの仰る通り、終いには俺が原因でコンパが成り立たなかったワケです。  食事に来た理人さんに『雅巳くんに振られました』と説明したら、フェロモンと同時に溜息を溢しながら『当たり前だろ』言われました。あの件をご存知でない貴方が何故分かるのでしょう。スリムな身体で男らしく特盛天丼の海老を口へ運びながら奴は応えた。 『お前、何年あいつ見てんだ? そんだけ一緒に居て分からないのか。金払ってまで死の見えてる戦いに態々(わざわざ)出向く理由(ワケ)ねぇだろが普通。まあ、あいつは金云々やなくてプライドが崩れるとかそんなとこだと思うけど。いくらお前の頼みでも無理なものは無理だ。事務所でも女に対しては、お局のバアさんとしか禄に会話出来ねえやつだからな、あいつは』  どうして俺よりもアンタの方が雅巳くんの事解ってるんだよ。  俺らは一緒にエッチなDVD観れる間柄なのに!! 計5本以上観たのに!!  ――――そういう問題じゃないけど何か悔しかった。嫉妬なんか俺には無縁なものだと思ってた。民ちゃんの事も、玉砕したのに雅巳くんには嫉妬しなかった。寧ろ、あの2人を応援したくなったくらいなのに、理人さんに対しては嫉妬の感情が湧いている。    プライドが壊れたのは、もはや俺だ。      ◆  結局、雅巳くんが来ないと民ちゃんが参加取消しにすると言うので、どうしてもあいつを参加させる必要があった。汚い手を使ってまでも誘った。最近バラエティー番組とかに出演して売れ出したセクシー女優の画像を雅巳くんが食事中にちらつかせたりしたが、一瞬観てフッて笑ったのに断られた。  なんてガードが固いこと!!  しかし意外にも意外な人物バナナ大好きくまモンのお陰で事が上手く運んだ。  要監視人物くまモンの保護者として厨房の女料理長も参加となり、  何はともあれ、これにて一件落着!!  心の中で上手く締めたが、俺がセクシー女優の画像をちらつかせてまで誘った事とか理人さんに報告されてたのか、後で理人さんにこっ酷く叱られた。  関ヶ原の戦い並に気合の入ったコンパはあと僅か2日後。  バナナプレイ……もとい、雅巳くんと民ちゃんの接近が楽しみだ。 **********晃の部屋END
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