第1章

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 コンパにあの子が参加してるとは限らない。厨房に料理長を除いた女子職員が何人居るかは分からないけど、ヒットしてる可能性は0じゃない。  あの子が参加してるしてないは置いといて、せめてこの機会に敦啓君か料理長さんに何とか接近して僕を知ってもらいたい(料理長は怖そうな人だったから出来れば敦啓君に)。  もう一度、ポケットの中のメモを握り締めて聞いてみた。 『晃……。男組の枠、まだ空いてる?』    参加するとは言ってないのに『ヤッター!!』って、いきなり僕の頭を髪が2、3本抜けたんじゃないか並に激しく撫で回し抱きついてきた。女の子との抱擁なら10本くらい抜けようがそんなの気付かないくらい大歓迎だけど、こんな筋肉ゴリゴリの男にやられても全然嬉しくない。コレをその他大勢が見たら100%誤解するに違いない。現れるとこに事件の香りを撒き散らしている晃と一緒にいれば、あの子に僕の存在を知って貰える確率が上がるかもしれないけど、こんな怪しいかたちでイメージされるのだけは死んでも()だ。 『わかったからどっかいけって、もうっ!!』  気を込めた両手で付き飛ばして2階に逃げた。  何だあの喜びようは。  歪んだネクタイを直しながら事務所に入る。朝っぱらからとんだ災難だった。  まあ、どうせあいつの事だから他のイケメン入れるよか引き立て役に最適の僕を入れたがってたに決まってるけど。  ちなみに僕は晃を引き立てる気なんて更々無い。  ひょっとかしたらライバルになるかもしれないんだから。      ◆  あのコンパの主催者は実は晃じゃなくて理人さんだった。  今、理人さんに今朝の晃に誘われた経緯(いきさつ)を説明したら舌打ちをして「あいつめ……」と呟いてた。その後に「ごめんな」と謝られた。  どうして謝られたのか分からなかった。  隣のデスクで仕事しながら、いつもより多い理人さんの溜息が聞こえた。
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