第1章

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**********晃の部屋  俺は岐阜の陶磁器製造会社内にあるレストランでウェイターをしている。この小説の主人公の加藤雅巳くんと同じ高校を一緒に卒業して向こうは事務所の職員で俺の方はレストランのウェイターに就職した。高校時代は学科が違っててあんまし接点無かったけど、就職してからよく話すようになった。高校時代、俺は学祭イベントとか学校行事盛り上げ係な感じのイケメンで、一方あいつは資格取得に専念してた物静か系のイケメンでお互い有名だった。あいつの()れてない感じのとこが魅力だったのか俺の周りに『ワンナイトラブを楽しんでみたい』とか言ってるやつが相当居た。あいにく全校生徒の9割が男子だったが。今冷静になって考えてみりゃあ、結構やばい学校かもしれなかった。  就職してからは年齢制限解禁になったって事でお互いどっちかの家でエッチなDVD観たりしたけど、人並みに喜んで観てたから普通の健全な男子だと解って、安心した反面ちょっとだけ残念だった。  本人は自覚してないだろうけど、あいつはかなりのイケメンだと思う。あれで普通に喋れる様なやつだったらと思うと恐ろしい限り。初出勤の時のスーツ姿を見た時はとんでもない裏ボスが現れやがったと思った。この小説がノーマルラブジャンルやなくてボーイズラブジャンルだったら俺の立ち位置が固く確保できて良かったのにって思った……って、何言ってんだお前、って言いたいですよね(ワラ)。雅巳くんは低コスパでお腹満足のうちの名物の天丼がお気に入りの様で、もしくは俺の凛々しいウェイター姿を見たくてたまらんのか昼休みによくレストランに食事しに来てくれるのだが、メニューブック開く前に袖のボタンを両方外して袖口を握りながら手を口に当ててから捲るという仕草とか、まじで反則や思った。  ここのホールで共に働いてるお姉様方は“雅巳くんにオーダー取りに行くんだ&料理提供するんだ争奪戦”に燃えている。ミスター萌え袖の破壊力恐るべし。  昼休みに入り、事務所のスーツ軍団がレストランにやってきた瞬間、ここの空気がメラメラと変わる。  最近は厨房の女の子までも仕事中、雅巳くんを覗きにきている。レストランと厨房の仕切りに掛けてある暖簾(のれん)から、身を乗り出す様にして見てる姿を何度か目撃している。人を押し退けてガツガツ行くお姉様方よりも一歩下がったとこで見てるとこが健気だなあと思った。これまた俺の超タイプの子で、その子が俺の友達見てるとか複雑だった。こんな漫画みたいな事が現実で起こるもんなんだと。  あいつが気付く前に俺に振り向かせてやると意気込み何度も話しかけたが、彼女は俺の話に相槌打ちながら、俺を通してあいつを見ていた。  初めて人を好きになって初めて振られた。  まだ告ってないのに。  好きじゃないです。  って言われてないのに、そう言われたのと同じ気持ちだった。
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