インターホン

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「スマホが見つかんなくてさ、結局ブレーカーを上げる前に電気がついたよ」  僕はすぐ近くにあったスマホを手に取る。こんなに近くにあったのに気づかなかったのかと、舌打ちしたい気持ちになる。 「何だよースマホすぐ近くにあった。何で見つかんなかったんだろう……そういえば、さっき女の人が来たんだけど、大丈夫だったかなー」 「女の人?」 「そうそう、停電した時にインターホンが鳴ってさ。出ようと思ったんでけど、俺パンツ一枚だったから無理で」  犯罪者にはなりたくないからなと笑う僕に、菊池は「インターホンが鳴ったのか?」と笑いもせずに聞き返してきた。 「そうだけど?」 「停電なんだから、インターホンは鳴らないんじゃないのか?」  菊池の一言に、僕は一気に背筋に悪寒が走る。  確かにそうだ。停電しているのにインターホンだけが使えるだなんてあり得ない。  今更ながらその女性の不気味な雰囲気も思い出し、全身に鳥肌が立つ。停電しているのにわざわざ暗くなったマンションの廊下に出るのもおかしい。 「出なくて正解だ」  菊池の言葉に納得するも、僕は何も返すことが出来なかった。
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