インターホン

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 視界が突如として、闇に閉ざされる。  消えたパソコン画面と、テレビの画面に愕然としつつ、僕は通話用のヘッドホンを外した。  唯一の光源になるスマホを探そうとして、万年床の上を滑らすように掌を這わせていく。ブレーカーを上げるにしても、明かりが無いと見えない。  視界が閉ざされているという不安と、スマホが見つからない焦り。闇は人に恐怖を与えるには十分な威力を発揮した。  僕も例に漏れず、恐怖と焦燥感を胸に抱えて必死にスマホを探していく。日頃のだらしなさがこういう時に、裏目に出るのだ。  外からは車の走り去る音が聞こえてくる。  暗闇の世界にたった一人、取り残されてしまっているような錯覚に陥っていた僕は、車の唸り声に少しだけ安堵した。 ――ピンポーン  突然鳴り響いた部屋のインターホンに、僕は驚きのあまり肩が跳ね上がった。  煌々と光るカメラモニター。ぼんやりと映し出されている人影。僕は光に吸い寄せられる虫のように、その白い光を頼りに近づいた。  画面には髪の長い女性が、立っている姿が映し出されていた。顔は髪と闇のせいでよく分からない。非常灯の緑色の光がその女性を微かに照らし、白っぽいワンピースがぼんやりと光って見える。
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