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氷魚の問いかけに、ヒタキはひとつ首を傾げる。じっ、と氷魚を見つめて、こくりと頷いた。氷魚も一つ頷いて、また歩き出す。
二人で家に戻り、氷魚はばたばたと動き出す。ヒタキには「少し好きにしてて」と言い置いた。
持ち帰った袋から魚を取り出し冷蔵と冷凍に分けて入れ、冷凍庫と冷蔵庫からあらかじめ入っていたご飯と鰆を取り出す。
ご飯をレンジに、切り身にした鰆に酒と振って、放置する。
ベランダに出て持ち帰ってきたヒラザルの魚を干し網にセットしてつるしておく。
キッチンに戻り、やかんで湯を沸かしながら、グリルに火を入れる。レンジで温めたご飯を二分にして、軽くごま塩を振って握り、海苔で巻く。
放置しておいた鰆をキッチンペーパーで水分を拭き、塩を振りかけるとグリルの網に乗せる。
小さく切った二枚のラップの上にわかめと味噌、鰹節を混ぜて一口大にして包む。
湧いたやかんのお湯を使い古した魔法瓶の水筒に注いで蓋をした。
椀を二つ用意して、丁度良いサイズの鞄を捜す。
手近にあった手提げバッグをひっつかみ、グリルの中の鰆をひっくり返す。
水筒、椀、一口大のラップとおにぎりを鞄の中に入れる。
アルミホイルを広げ、鰆が焼けるのを待って、一息ついた。
振り返るとヒタキはじっと氷魚を見て立ち尽くしている。どうやら、この一部始終の間、数歩離れたところから眺めていたようだった。
氷魚は少しだけ、呆れたように笑う。
「座っててよかったのに」
言いながら肩を叩いて、寝室の敷居を跨ぐとヒタキに手招きをして畳の上に座らせる。
「そこからでも見えるだろ? もう少しだけど、待ってて」
言い置いて、キッチンに戻る。グリルの火を止め、焼けた鰆をアルミホイルに包んで、鞄の荷物に足す。
寝室へと踵を返したかと思うと、仰ぎ見るヒタキの隣を通り抜け、おもむろに襖を開いた。開かれた襖の向こうにも畳の床が見える。
ずっと締め切られていたが、二間続きの部屋となっていたらしい。
ほんの少し開かれただけの扉から、中の様子はよくわからなかった。氷魚はすぐに戻ってきて、襖を閉めてしまう。
そして、
「疲れてはいない?」
ヒタキに目を向け、訊ねる。
問いかけられ、ヒタキは首を振った。
氷魚はうん、と首を縦に一つ振り、ヒタキに向かって手を差し出す。
「じゃあ、行こうか」
その手をそっと取り立ち上がると、ヒタキは氷魚に続いた。
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