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ようやく目的地について足を止めた時には、ヒタキはまた大きく肩を上下させて息を切らせていた。
目の前には細長く白い建物が見える。
ここまでも何度か足を止めては、水分補給をしていたが、と氷魚は内心で反省する。
「頑張らせてごめんね。ついてきてくれてありがと」
頭撫で、そのまま下に滑らせてねぎらうように背中を撫でる。
海に続く岩場と岩場の間に補整された階段が上下しながら続いていた。
あと本当にもう少し。とヒタキを後押しして、階段を進む。
「ここ……」
眼前に近付いてくる大きく白い建物を見上げて、ヒタキが呟く。
「灯台だよ。俺のお気に入りの場所なんだ」
入り口の傍の少し開けた白い石段の踊り場に、氷魚はおもむろに腰を下ろす。隣を叩いて、ヒタキを招いた。
鞄から持ってきた昼食を取り出す。
椀にラップに包んだ小さな味噌玉を落とし入れ、魔法瓶からゆっくりと湯を注ぎながら椀を揺らす。
「ごめん、箸を忘れてた減ってきたら零さないように揺らしながら飲んで」
困ったような微笑みを見つめながら、ヒタキは渡された湯気の立つ椀を受け取り、大まじめに頷いた。
唇をつけて傾け、少し顔を顰めた。
そういえば、と朝を思い出しながら、
「まだ熱かった? 少し置いて冷ますといいよ」
と、自分の分を一口飲んで、椀を脇に置く。
そして、ラップに包んだおにぎりとアルミホイルに包んだ塩焼きの鰆を取り出して、差し出す。
「これはこのラップをここからこうして剥がして、食べる。こっちもこの銀色のアルミホイルを剥いて適当にがぶっと」
氷魚はそう言い、鰆を口にしてから、おにぎりにかぶりつく。
ヒタキもそれを倣って同じように食べ始める。
目を瞬かせてかぶりつく姿に、口に合ったようだと安堵しながら、食べ進める姿を見守る。
氷魚が味噌汁に手をつけると、ヒタキも同じように椀を手に取った。
口はつけずにじっと警戒する様子で中身を眺めている。
「さっきよりは冷めてると思うよ。そうっと飲んでみて。熱かったらフーフーして」
ふー。と息を吹き出してみせると、それを真似して何度も息を吹きかけた。
笑って様子を見守りつつ、視線を景色に向ける。
心地の良い海風が吹き抜けて、髪を揺らした。
二人でのんびりと昼食を味わい、一息つく。
後片付けを済ませ、半分以下に減ってしまったヒタキのペットボトルを取り出す。
飲むだろうと渡しかけて、まだ三分の一ほどしか減っていない自分のペットボトルと交換しようと告げる。
ヒタキは首を振ったが、
「俺のだと嫌?」
と首を傾けると、再びぶんぶんと首を振るので、氷魚はにこっと微笑んだ。
「じゃあこっちで」
自分のペットボトルを手渡して、立ち上がる。
「あ、りがと。氷魚」
「荷物を軽くしたかっただけだよ。ヒタキ、歩ける?」
手を貸してヒタキを立たせると、灯台を仰ぎ見る。
「つらくなかったら、もう少し付き合って」
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