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Scarlet Taste
柘榴はひとの味がする ―――
そうわたしに教えてくれたのは
まだ幼いあなただったろうか。
食べ残された柘榴を見付けて
わたしはふとそんなことを思った。
忘れられ、萎びるままの柘榴は
艶を失ってなお、その色を濃く深くする。
妖しくも美しい紅色。
あなたはもうこの味を知ったろうか。
いや、きっとまだ知らないだろう。
あなたは高潔なひとだから
この紅色に惹かれたりなどしない。
あぁ、でも ―――
あなたが知るはじめての味が
わたしであったらどれほどいいか。
そんなくだらない考えを振り払いたくて
わたしは柘榴をひと粒取り、口に入れた。
「苦い……」
日本語題:罪の味
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