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リナとは先月会社の先輩に連れて行かれた飲み屋で知り合った。
酔っ払った先輩をタクシーまで運ぼうと思ったものの、先輩を抱えるとかばんを持てなくて、更に俺だって飲んでいたから少しキツかった時に助けてくれたのがリナだった。
その親切に甘え……ただ、どっちかと言えば苦手なタイプで咄嗟に名乗ったのが先輩の名前だ。
それなのにたまたま昼休憩で入った店で隣の席になり運命だとグイグイ来られ……今に至る。
はは……面倒くせ。
そもそも何で誕生日とか言ったかなぁ。
まぁ、本物の|槇先輩は来週誕生日だとか言ってたけど……それでだろうな。うん。そういうことだ。知らんけど。
「槇さん、当日無理なら今からお祝いしません?好きなイタリアンが近くにあるんですけどぉ」
甘えたような声に吐き気を覚えつつ、笑顔でリナの肩を抱く。
「えー、もうそんな祝われて嬉しい歳でもないしいいよ。ついに30代だしね」
そういえば年齢も26ではなく、槇先輩の29と言ってあったのを思い出してまた平然と嘘を重ねた。
「どっちにしてもご飯……行くでしょ?」
上目遣いで瞬きをパチパチ……それかわいいと思ってんのか?
でも、ノったフリをして「行くよ」と笑顔を作る。
胸の内では毒づきながら笑顔で対応するのも営業職を続けてきて慣れたものだ。
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