通じない奴

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 お湯を沸かしながら食材を冷蔵庫に入れてフィルターを折り始める姿を見て、俺はまたベッドに転がった。 「何ー?また朝帰り?」 「関係ねぇだろ?」 「いつか刺されるね」  笑いながら俺のジャケットをハンガーに掛けてベルトを拾う幸奈を片目だけで見て無視をする。  目を閉じていると、ギシッとベッドが軋む音がした。 「起きて!コーヒー」  マグカップを出されて渋々起き上がる。  受け取って中身を見た俺は眉をひそめた。 「俺はブラックだっつったろうが」 「本当は甘いのが好きなくせに」  クスクス笑われてムッとしながら口をつける。  ほとんどミルクと砂糖のとろけるような甘さが身体に染み渡っていった。  本当、幸奈には嘘も通じない。 「またあのカフェ店員?」 「あれはちゃんと終わった」 「へぇ……じゃあ、また新しい人?」 「そのカフェの向かいにでっかい会社あるだろ?そこの受付」  飲み終えたカップを幸奈の方へ渡すと、幸奈はテーブルに2つのカップを置いてからもたれかかってきた。 「またそんな身近で……」  ズルズルとずり落ちて俺の腿の上で止まると幸奈は俺を見上げてニヤリと笑う。
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