互いの求めたもの…、それは素顔?

1/1
前へ
/12ページ
次へ

互いの求めたもの…、それは素顔?

「ゴメンナサイ…。そちらの自己紹介を笑ったりして…」 「いえ…。ここでこぼれ笑いもなしに神妙な顔されたら、かえって辛い(笑)。今のリアクションは嬉しいですよ」 「はあ…、すいません…」 やや取ってつけたような理屈立てでのリターンではあったが、S美の笑顔は照れ笑いにスライドしていた。 うぶ…? そんな二文字がオレのアタマをよぎった。 これも、”平時”なら、取るに足らないスルーもので終わりだ。 でも…、やっぱ、この時期なんだろう。 目の前の平凡極まる体育会系の地味女が、呼吸レベルの自問自答を無意識で晒してくれてる絵柄に、今のオレが身を置くマインドには極で響いちゃったということで。 *** で、この日のランチ到着は事のほか、早かった。 自己紹介して、取るに足らないジャブの交わし合いみたいな雑談してたら、店員が“お待たせいたしました”と料理一色を運んできた。 「おー、今日は早いな。S美さん、どうぞ、召し上がりましょう!」 したら…、彼女、またまた何ともなカオでオンリー・リアクションだったわ。 「はい。でも…、あのー、これ見慣れたランチですけど、かなりなご馳走に見えちゃう。なんでだろう…」 この彼女、目を細めて感無量をこうぶち上げてきたよ。 素直…。 今度はこの二文字がアタマをよぎった。 *** ニンゲンって…、ひょっとして、気まぐれのマジョリティーで進化した? ちがうのはわかりきってる。 でも…。 テメーをドンと省みる機会がそこにドンとなれば、結局は足元に視界は占拠される。 そういうことさ。 灯台は下を照らせない。 だが、そこを事前自覚できるショットを会得できてるなら、ニンゲン、とてつもなく素直になれるんじゃないかな。 謙虚を伴って。 そこをベースで共に自認ってんなら、このS美とは互いの目線を信頼しあえる二人ってカンケーも可なんじゃないかって思えた。 で、オレは突飛ながら、S美にこう問いかけた。 「S美さん、口元を隠すこと…、それを計算しちゃって人と接する今の日常って、不健全だと思いませんか?」 「そうですね…、私も同感だなあ」 彼女は大きく頷いていた。 すでに二人の会話してはスイングしてたわ。 なので、オレは今のキモチをさらに吐き出すことにした。 正直に。 *** 「だから、そんな中でこんな出会い方ができたアナタとは、そうでない立場でありたいな。変なこだわりだけど…」 「じゃあ、スマホでマスクなしのカオ撮り、お互いでしときましょうか?」 「…」 ”おー、ここでこの発想か〜〜“ 箸を片手に、オレは思わずキョトンとした表情でS美をマジ見しながら、変に感心しちゃってさ。 彼女は照れ笑いを伴ってではだったが、その口っぷりからは真剣味が伝わってきたんだ。 ここで、この女性…、10歳下のS美に対し、決定的な興味、引っ張られ感が瞬時に湧いてきたよ。 それで、さり気に心の中で囁いたかな。 このヒトの“ココロの素顔”を見たい…、と…。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加