(三)

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 しかし羅麗華は、そんなアブノーマルと思えるような性質を隠し続けた。いえば必ず変態のレッテルを貼られ、実生活に支障が出る。苦しい青春時代だった。  苦悩が解かれたのは、就職のため都会に出てきてからだった。仕事のつまらなさが、仮面をかぶったままの人間関係に疲れた心が、 「素直に生きろ」  そう命じた。 「でもその結果がこうよ……。  結局間違っていたのよね……あたしの人生」  その台詞が、私にタッチパッドボタンをクリックさせた。  モニターに映しだされたのは、小奇麗に片づけられた部屋。  ベッドに腰かけている羅麗華。  煙草に火をつけると、空になった箱をひねった。  紫煙と同じく無造作な揺れを見せる上体。それが酔いのためであることは、眼前のガラステーブルに置かれたウィスキーボトルとロックグラスから想像できる。  氷が鳴った。  それが合図だったかのように、根元まで灰にした最後の一本を灰皿に押し潰すと、おぼつかない手はグラスのかたわらにあった小瓶をとった。  そして羅麗華は、中身を数えることなく一方の掌にあけた。  それを見つめる面に表情はない。  短くはない静寂。  白い錠剤の小山が一気に口に入れられた。立て続けにあおられるグラス。  数錠が口端からこぼれテーブルに広がったことなど意に介す気配も見せず、羅麗華はその身をベッドに横たえらせた。  と、枕元にあった携帯の着信音。  しかし、涙の筋を見せる目が開くことはなかった。 「てめえは大嘘つきだ!」  じっとモニターを睨みつけていた鋭い眼光が、被告を貫いた。 「死にたくもねえのに、自分殺しやがって!」 「でも、生きていても―――」 「黙れ!」  バンッと机を叩いた彼はやにわに立ちあがり、 「薬飲む前に、あんなにためらっていやがったじゃねえか! それこそが証拠だ!」 「……」 「しかもまったくひねりのねえ死に方しやがって! てめえなぞ、シタ抜いて地獄の最下層に堕としてやる!」  というが早いか、彼は文机をまわり込み被告の脇にくると、すかさずしゃがんで、ボディコンのにあった板を引き。  あ~! との悲鳴が聞こえたのは、開いた真っ暗な奈落の、ずいぶん下方からだった。
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