序章 おとぎ話

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序章 おとぎ話

むかしむかしのお話です。 この世界の片隅に一匹の(りゅう)が住んでいました。 それはそれは美しい龍でした。 うろこは黄金(こがね)色に輝き、爪は鋭く、(つの)は真珠のようにつややかでした。 たてがみは豊かで、ひげは長く、目は瑠璃よりも青く澄んでいました。 そして、その首にはみごとな宝珠(たま)が八つ飾ってありました。 あるときのことです。 欲深な人間が十人、首の宝珠を狙い、龍に争いをしかけました。 それはそれは激しい争いでした。 十人と龍は空で、海で、大地(おか)で、八日八晩(よばん)争い続けました。 そして、九日目の朝、龍はその姿を消しました。 十人は手分けして探しましたが、ついに龍を見付けることはできませんでした。 あとには八つの宝珠とひと振りの大剣(つるぎ)だけが残されました ―――――。
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