ゲレンデマジック

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ピンポーン お進みください… 前のリフトが進むのに合わせて、ストックを用いてゆっくりと前に滑り進む。停止線まで来たところで後ろを振り向き、シート部分を右手で抑えながら、肉が挟まれないように気を付けて腰を下ろす。 ウィィィン…ガコンッ、ウォォォン… ステーションを外れ、クワットリフトがレールへと乗る。第3高速クワッドリフトの名前の本領発揮と言わんばかりに加速するリフト。安全バーをお下げくださいというアナウンスをいつも通り聞き流し、尻とシートの間にストックを差し込む魔女スタイルへと移行する。 「ふう…」 一通りのルーティンを終え、一息つきながら風景に目を移す。 同じスキー場で平日に三日も滑り続けていると、スキー場にいるメンツも大体わかってくる。 あそこのビブを付けて滑っている集団は岐阜の高校生。スキー研修のようなやつだろう。 今上から片足で滑ってくる人はおそらく技選出場予定の人だろう。明らかにうまい。バリトレのレベルが違う。…あの練習結構よさそうだな、今度試してみるか。 あのコース左側で座って固まっている大学生くs…ボーダー集団ももうだいぶ長い。そこそこうまくなってきてはいるけど、コース上で固まる傾向は変わらない…お、雪ぶっかけられている。いいぞ、もっとやれ。 コース右側で一人ずつ滑っていく女の子の集団はおそらくどこかのサークルだろう。あの赤と白のウェアが一年生で、紺と水色のウェアが上級生だろうか。・・・うーん、重心の位置がそこじゃないんだよなあ。 後ろを振り返ると女の子のボード集団。卒業旅行だろうか。ゴーグルをとった姿はまさに女子大生と言わんばかりに華やか・・・じゃないんだなこれが。 「ゲレンデマジック」という言葉を考えたものに言いたいが、少なくとも女の子に対して適応されることはないと断言する。何日も山にいる人は、ゴーグルとバフに覆われた肌のことなど考えない。スキー場という場所は女子の魅力を半減させる。原田知世は素がトップレベルだからスキー場でも可愛いというだけなのだ。 ガコガコガコガコ… 心の中で熱く語っていると、気づけばリフトはラストの柱を越え、降り場へとすいこまれていくところだった。慌ててストックを尻の下から引き抜き、グローブを装着する。 テクニカルプライズの事前講習は明日。…正直3日前から慣らし練習をするのは早すぎたな。やることがなくなってきた。・・・さっきの技選の人のバリトレ、どうやってたっけか…
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