0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇねぇ。今度どっかご飯食べに行こうよ~。美味しいお店知ってるからさー!」
今日もまた、例のお爺さんがやってきた。毎日ではないが、週に2、3回は来店している。清子は特に何にもしていないのに妙に気に入られてしまい、やたらと食事に誘ってくる。
正直なところ、こういうのを笑顔で上手くあしらうのが苦手だ。年配の男性特有のなぜか自信満々なところや、顔全体がしわくちゃな見た目、歯が少なくネチョネチョとした聞き取りづらい話し声、誘い文句なのに耳が遠いおかげで声はお店全体に聞こえてしまいそうなくらい大きい…など、苦手要素が満載だった。
”お爺ちゃんには悪いけれど、なんとか上手く話を流そう” 引きつった頬がバレないよう、気をつけながら笑顔を作る。
「そう!そのいつもニコニコしている笑顔がいいんだよー!なんでいつもニコニコしているの?」
「えー⁉︎そんなに私ニコニコしてますかぁ〜?自分じゃそんなつもりはないんですけどぉ〜。」お店なので愛想笑いをしているだけなのだが、なぜか常時笑顔の人間だと思われているらしい。
「ニコニコしてるじゃない!いや実はね・・・大昔にひどいことをしちゃった女の人にそっくりなんだよー。あの頃は若かったというか・・・それでもいいやと思っちゃったんだよね・・・。」
この人その女性に一体何したのかしら⁉︎と疑問が湧いたところで、「じゃ!お風呂入ってくる!」と元気に男湯へ消えてしまった。
”なんだったのかしら? 一体…” わけのわからないまま、とりあえず食事のお誘いは回避できたことにホッと胸をなでおろした。
最初のコメントを投稿しよう!