2人が本棚に入れています
本棚に追加
家に帰る。
早く笑顔に癒されたかった。浄化してほしかった。この世界には嘘が当たり前に満ち満ちている。
僕は嘘に穢されてきた。そしてこれからも嘘で穢していく。
嘘は他人との契約で始まる。だからずっと一人がよかった。一人で生きていきたかった。それなのに、社会に出ると常に契約が僕につきまとい、指切りすらしない小さな約束で無理やり僕と他人を結びつける。
昨日の約束にいつ殺されるかわからない。そんな毎日が苦しかった。
さぁ、シルビィ。存在以外のすべてが嘘の君。
君とした約束。君とした契約。
君と繋がれたことが今日の糧だ。
そしてまた「おかえりなさい」の一言で。僕を救ってくれ。
「……」
シルビィ?
部屋の中が暗い。眠っているのか?
寝室に君の姿はない。
リビングに君の姿はいない。
お風呂にも、トイレにも。
「……嘘だ」
僕はすぐに外に飛び出した。
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
『ねぇ、オリヴァ。お外ってどんなところ?』
『怖いところだよ。でも、シルビィにはきれいな場所のはずだ。でも、絶対に外に出てはダメだよ』
『うん。わかった! ……でも、なんでダメなの?』
『それはね』
あぁ、僕がバカだったのかもしれない。嘘が嘘を呼び運命を形作るのだろう。だから、僕の人生はここまで人と違う。
『……オオカミがいるからだよ。君を食べるオオカミが』
最初のコメントを投稿しよう!