糧なる『嘘』

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 家に帰る。  早く笑顔に癒されたかった。浄化してほしかった。この世界には嘘が当たり前に満ち満ちている。  僕は嘘に穢されてきた。そしてこれからも嘘で穢していく。  嘘は他人との契約で始まる。だからずっと一人がよかった。一人で生きていきたかった。それなのに、社会に出ると常に契約が僕につきまとい、指切りすらしない小さな約束で無理やり僕と他人を結びつける。  昨日の約束にいつ殺されるかわからない。そんな毎日が苦しかった。  さぁ、シルビィ。存在以外のすべてが嘘の君。  君とした約束。君とした契約。  君と繋がれたことが今日の糧だ。  そしてまた「おかえりなさい」の一言で。僕を救ってくれ。 「……」  シルビィ?  部屋の中が暗い。眠っているのか?  寝室に君の姿はない。  リビングに君の姿はいない。  お風呂にも、トイレにも。 「……嘘だ」  僕はすぐに外に飛び出した。  嘘だ。嘘だ。嘘だ。 『ねぇ、オリヴァ。お外ってどんなところ?』 『怖いところだよ。でも、シルビィにはきれいな場所のはずだ。でも、絶対に外に出てはダメだよ』 『うん。わかった! ……でも、なんでダメなの?』 『それはね』  あぁ、僕がバカだったのかもしれない。嘘が嘘を呼び運命を形作るのだろう。だから、僕の人生はここまで人と違う。 『……オオカミがいるからだよ。君を食べるオオカミが』
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