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声を出さないで
車を降りたケンジは子供のようにはしゃいでいた。
「いいねいいね。雰囲気あるよ。いいのが撮れそう」
早速ゴープロの電源を入れて撮影を始めた。
「えー、今、僕はあの噂の○○トンネルに来ています。これから僕が行うのは、噂の、あの検証です」
ゴープロを自分に向けて話すケンジの横でユイカは目の前の古いトンネルを眺めていた。
周りは草木が生い茂り、外壁のブロックにはつる草が覆っている。
随分と使われていないのか、荒れ放題に伸びきった草木がこの使われなくなったこのトンネルの歴史を感じさせた。
大きな口を開けて闇を見せるその入り口の前には、人より高い金網のフェンスが張られている。上には有刺鉄線が張り巡らされ、人の侵入を塞ぐかのように『立ち入り禁止』という板の看板が網に貼りつけられてあった。
〇〇トンネルの中には何かがいる
明かりは絶対に絶やしてはいけない
もし暗闇になったとしても決して声は出すな
もし何かが起こったとしても絶対に声は出すな
誰から聞いたのか、そんなヘンテコな噂をケンジは聞いてきた。
「検証しに行こうぜ。まだ誰もアップしてないみたいだしさ」
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