1人が本棚に入れています
本棚に追加
1章:事件の起こり(はじまり)
「イッつつつつ……。」
頭が痛い。割れるように痛い。
気分は最悪と言って良い。考え着く限り最悪な悪夢を見た。
そこでは僕が知らない間に、知らない銀行の一室で寝ていた。
その部屋には窓は無く、本棚が部屋を取り囲んでいた。
鍵は掛かっていて、出入り口は部屋の隅の鍵のかかった扉くらいしか見当たらなかった。
他には、ここが銀行の一室だと思った要因たる金庫が部屋の奥に有る。
非常に堅牢そうな、自分の身長程はある個人の持ち物とは思えない金庫だ。
が、
この金庫の扉は無造作に開け放たれていた。本来外敵から腹の中の宝物を守るべき守り手が、大口を開けていた。
その金庫の横。太い角材が転がり、本棚の下に男が寝ていた。他の場所は茶色の絨毯なのだが、ここだけ絨毯が赤かった。
よく見ると男の頭から血が流れていた。
慌てて男を介抱しようとすると、破裂するような音がして眼鏡の神経質そうな男とおどおどした女が唯一の出入り口のドアを蹴破り、部屋に入って来た。
そこからはあっという間、あれよあれよという間に眼鏡の男に右手一本で関節技を掛けられ、お巡りさんの前。
あぁ、これは悪夢では無かったのか。
関節技の痛みで呑気にそう気づいたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!