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よしよし、それでいい。
あんたも知っての通り、俺は稀代の大噓つきで名が通っている。いわゆる、千三つってやつだ。若いのに、いっちょ前に言葉を知ってやがるって? そりゃそうさ。危険を冒してまで、あんたに会いに来るような男だぜ。千三つの言葉の意味くらい、調べらあ。千のうち、本当のことは三つも言わないって意味だろ。あ? ちょっと違う? まあ、細かいことはいいじゃねえか。
俺はな、物心ついた時から千三つだった。きっかけは親父だ。親父は、一人息子と息の合ったマジックが人気の、そこそこ知名度のあるマジシャンだった。あんたも昔、テレビで一度くらい見たことないか? 男が引くトランプを目隠しした息子が予言する。それはどんどんエスカレートして、芸能人の未来予知までするようになった。そう、奇跡の子。それが俺。
もちろんそんなのはいかさまだ。俺に神通力なんてもんはない。すべて親父が仕組んだことだった。長くは続かなかったな。タレコミがあったんだ。たぶん、テレビ局の誰かだろう。芸能界から干され、世間から目も当てられないバッシングを受けた俺達は、親父の生まれ故郷である田舎に引っ越したよ。自業自得だよな。でも俺は、テレビに出ていた頃、罪の意識なんてものはなかったんだ。親父の指示で予言をすることが、悪いことだと思わなかった。わかるだろ? 俺の千三つぶりは、幼少期の人格形成から深く根づいたもの。そこに疑問を抱く余地はなかった。だけど俺は、好き好んで千三つになったわけじゃねえ。
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