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その頃、フラグラード王国を騒がせていたのは、マスク・ド・ピエールと名乗る義賊だった。
上流階級の屋敷に忍び込んでは、貴金属やジュエリーを持ち去る。そして、どこでどう換金するのか、王国内各地の孤児院にそれ相当の額が投げ込まれる。しかし、その現金が宝飾品を元にしたものだという証拠はないので、被害にあった者はそれを取り返すことは出来ないし、受け取った孤児院は善意の寄付として使うことが出来る。
その義賊が立ち去った後には、美しい石がひとつ、置かれている……らしい。
らしい、というのは、私の実家にはまだ現れていないから。
王族であるゼスフィルには流石に無縁のようだけれど、クラスメイトたちの実家は軒並み被害にあっている。
その中で、私の実家だけが被害がないというのはかなり言い出しにくいことだった。要は、所詮庶民だということだから。盗賊にすら、上流階級とは認められていない。その事実は、クラスの中で浮いている自覚がある私を、更に気後れさせるには充分だった。
「聞いて下さる? 私の家にもマスク・ド・ピエールが現れましたの」
シャルロットが薄笑いを浮かべて、わざわざ私に伝えに来た。
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