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「お母様の秘蔵の品を全て持って行ってしまって、後にはこんな小さな石ですってよ」  彼女が指先で表したのは、ほんの1センチほどの大きさだ。 「どんな石でしたの?」  私に自慢をしたいのだろう。一応、付き合って聞いてみる。  彼女の家は、貴族の中でも下位とされる男爵家。資産で比べれば、プランフォリア家に及ばない。 「薄いブルーに、白い模様が入っっている石でしたわ。美しいけれど、宝石とは呼べませんわね」  どんな物なのだろう。耳にする話では、それぞれ違う種類の石が置かれているらしい。 「シャルロット様」  落ち着きのある声が、彼女を嗜めるように呼ぶ。ローザだ。  彼女は第一王子であるディオランの婚約者。公爵家の御令嬢だ。  その身分に加えて、凛とした気品と、薔薇も霞むほどの鮮やかな美しさ、聖母のような優しさを兼ね備えている。将来、王妃となり、そして王母となるに相応しい方。  彼女の取り巻きとしてうろちょろしているシャルロットは、その一声に押し黙る。 「その石は肌身離さずお持ちになると宜しいですよ、シャルロット様」  思いがけない声に、聞こえて来た方を見上げる。
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