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 知らない間に、私たちの隣にミコトが立っていた。 「何故ですの?」  私が尋ねると、ミコトは笑みを湛えて答えてくれた。 「ブルーレースアゲート。平穏という意味があります。心を落ち着かせてくれますから、ご自身が仰ったことがどのようなことか……」  ミコトはそこで言葉を区切り、シャルロットを見つめる。シャルロットは、品がないことを言ってしまったことに気が付いたのだろう。何も言えずに俯く。 「貴女程の聡明な方なら、私が差し出口を挟むまでもありませんね」  シャルロットは恥ずかしくなったのだろう。無言で立ち上がり、自席に戻って行った。 「ありがとうございます」  彼女たちが、わざわざ自分が優位であると誇示して来るのはいつものことだ。慣れている。だからと言って、気分がいいわけではない。  話を断ち切ってくれたミコトに感謝の言葉を送る。 「大したことではありません」  ミコトの笑顔は爽やかだ。森を吹き抜ける風のように感じる。  彼に関する噂をまとめると、日本という国の王族のような一族の一員で、王に近い存在の親戚筋だということだ。王位の継承権もあるということだから、本物のプリンス。日本では違う名称で呼ばれるようだが。
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