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 現実家の父の影響で、私は虚栄を望まない。身の丈にあった生活で構わないと思う。  その身の丈を伸ばす為に、この国で最高の教育が受けられるこの学院へ入学できるように尽力してくれたのは、父その人だ。  ミコトはやってくる少女たちにせがまれるまま、祖国の話を語って聞かせている。  それは、その日本が神に作られたという神話から、文化に満ちた優雅な時代、華やかな爛熟の時代……。彼が語る日本は、美しい物に満ちている。  行ってみたいと、少し思った。どれほど鮮やかで豊かな国なのだろう。どんな街並みをどんな人々が行き交っているのだろう  うっとりと隣から聞こえる話に耳を傾けていると、私の机にとん、と手をついて、ゼスフィルが私の頬をつつく。 「フィル」 「ヤスミン、どうしたんだい?」  彼はにっこりと笑う。彼ほどの身分になると、逆に身分の違いなど意識しないようだ。  愛称のフィルで呼ぶように、と決めたのも彼だ。  入学時に、政治家の一人すら輩出していない、いわゆる成金の家の出の私は、クラスメイトから白い目で見られ、陰口を叩かれた。  それを 敏感に察知したのはゼスフィルだ。すぐに私に話しかけてくれるようになった。幼馴染の3人と共に。
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