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 ミコトが私の方へとその布を寄せてくれる。それに押されて、話していた女生徒は一歩下がり、ぷいと他所へ行ってしまった。  私は少し申し訳なく思いながらも、その布に触れてみた。上質の、しっとりと柔らかな手触り。 「これは、京友禅という染めです。全て手描きです」 「手描き……」  ため息しか出ない。とても華やかで複雑な柄だ。これを手描きでとなると、気が遠くなるほどの手間がかかるのだろう。 「これは風呂敷ですからこの大きさですが、着物を仕立てる反物は13メートル程もあります」 「13メートルも!」  思わず声を上げる。大変な作業ではないか。どれ程高価な物になるのか。 「ヤスミン様は着物もお似合いになりそうですね」 「恥ずかしいことですが、見たこともありませんの」  キモノ、という言葉はどこかで聞いたことがあるが、どんなものなのかは知らない。  でも、こんなに美しい柄を身に纏える物であることは理解ができた。 「でも、機会があれば身に着けてみたいですわ」  素直にそう伝えると、ミコトはフロシキを折り畳んで私に差し出す。
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