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 同じクラスで過ごし、同じ部活動をしてから、下校するときもこの男から離れないようにした。初めは、一緒に帰ることに戸惑った声を出していた男も、時間が経てばその生活に慣れ始めて、私が言うまでもなく帰路を共にすることを許すようになった。  この男は話好きのようで、私が何かを尋ねるまでもなく、自分から自身のことをよく話していた。私は適当に相槌を打つだけで、彼の人となりを自然と知ることができた。  そして知っていけばいくほどに、疑問が湧いてくる。  この男は何故暗殺対象になったのだろう。  機関の命令だと言うのは重々承知しているが、彼にはまるで悪意のようなものを感じない。周囲に面倒をかけることはあっても、故意にそのようにすることはほぼないと言ってもいい。全くの無害の人間とも言える人物だった。あくまでも私の観察した結果の上においては、だが。  今後重大犯罪を犯す可能性のある者、また犯罪を起こした者を始末するように機関が命令することはあっても、彼のような人物は異例だった。  そこまで考えて、思考を埋めていくような雑念を振って払う。  私はただ機関の命令に従っていればいい。それが私の任務だから。  残りの期間は一ヶ月。期限まで余裕があるほどではないが、まだ時間はある。もう少し彼のことを調べてみよう。可笑しな話だが、今までの暗殺対象とは異なるこの男に対して、ほんの少しの興味が湧いていたのだ。
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