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香奈子は軽い足取りで、美容室を後にした。
その足取りのまま、スーパーで食材を買い、野菜をたくさん入れた温かいスープとバゲットを用意して、久しぶりにゆっくりと夕食を楽しんだ。
夕食を楽しんだ後は、てきぱきと明日の準備をし、ベッドに入る。いつもならば翌日の仕事を考えながら寝るが、今日はすぐに眠ってしまった。
翌日目が覚めると、体も気持ちもいつも以上に軽かった。こんなに軽くなったのはいったいいつぶりだろうか。てきぱきと朝食と身支度を済ませ、香奈子は家を出る。
会社に寄らず、ファッションイベントの会場に直行するとすぐに、現場での最終チェックを後輩と共に準備をする。
これからこの大型イベントを仕切る。
あらためて気持ちを引き締めてから、もう度進行表を確認する。
「宮野さん、今日キラキラですね」
後輩から唐突にそう言われ、香奈子は不思議な顔をして後輩を見た。
「そう?」
「そうですよ。昨日まであんなにゾンビだったのに、たった一日でどうしてそんなにキラキラになれたんですか?」
「髪を切ったから、かなぁ」
「朝から思っていましたけど、すごく似合ってますね、その髪型」
「ありがとう」
思いがけず褒められたことに香奈子は心の中で動揺しながらも、いつもどおりの笑顔で対応する。
「笑顔までキラキラしてて、羨ましいですよ」
「千葉さんもなれるよ。さ、最後のチェックをしに行こう」
香奈子は後輩と共に最後の確認をするために上司のもとへ歩き出した。
ゾンビではなくなった、キラキラした自分ならば今日のイベントは成功すると信じて。
完
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